翻訳をしていると、日本語に「これだ」と言い切れる訳語が見つからない単語に出会うことがあります。『エンジニアリングチームのリード術』という原題は”Leading Effective Engineering Teams”ですが、この”Effective”がまさにそれでした。
最初に思いついたのは「効果的」でした。ただ、「効果的」は日常会話で頻繁に使う語というよりは、どこか硬い印象もある。少しひっかかって、いったん保留にしました。
次に考えたのは「効率的な」です。けれど、本書では”Efficiency”(効率性)と”Effectiveness”は別概念として説明しています。ここで”Effectiveness”を「効率的」と訳してしまうと、内容そのものをねじ曲げてしまう。これはボツ。
では、意訳して「有能な」とか「成果を上げる」といった方向はどうか。そうも思ったのですが、本書には”Efficiency”/”Effectiveness”/”Productivity”を並べて比較する章があります。「効率性」と「生産性」と並ぶ言葉として、”Effectiveness”だけが長い言い回しになるのも避けたい……。
そんな風に数日悩んでたのですが、解決するときは案外あっさりでした。そもそもこの本は、Googleの「Project Aristotle」の成果を踏まえた内容です。そして、その「Project Aristotle」の結果は日本語でもまとめられていました。
「効果的なチームとは何か」を知る
そこでは”Effective team”が、はっきりと「効果的なチーム」と訳されています。
ここで本家が「効果的」って訳している以上、むしろこちらが別の訳語を使うほうが不自然に思えてきました。結果として、本書でも”Effective”は「効果的」を採用しました。
耳慣れない言葉ではありますが、いろいろ悩んだうえでの選択だった、ということをここに書き留めておきます。さすがに翻訳書のほうに、こんな言い訳めいたことは注釈でもかけないので……